二輪教習奮闘記 〜42歳の挑戦〜  by.とーこ

 

   


この記録は、子供の頃から自転車にも乗ったことがなく、誰よりも運動能力が低い42歳の女が、

何を血迷ったのか、自動二輪免許を取得しようと試みた151日間の壮絶な闘いの記録である。

 
         
 

第一段階  基本操作および基本走行 <第一部>

2011年7月23日(土) =入校式=



今日は自動車教習所の入校式。

この歳にもなって、”入校式”とやらに出るなんて思ってもみなかったけど、やっぱり緊張するもんだねぇ。

自動二輪の免許を取ろうと決めた時からは意外と行動が早かった。

会社から車でほんの3分ほどの場所に教習所があったので、迷わずココに決めたのだけど、
実はこの学校は合宿がメインらしく、 通学する生徒には少し不利な点が多かった。

合宿生は当然、集中して学科や実技の予約が取れるのだけど、通学者はなかなかこの予約が取れないそうな。

極端な話、空きがあればどうぞ。。。みたいな雰囲気。

同じお金払ってるんだからそれは無いだろうと思いつつ、夏休みにかかるこの時期に入った私も悪いんだろうと諦め、
簡単な適正検査を済ませ、教習の流れやシステムを教えてもらう。

なるほど周りを見ると、若い子が大半で、こんなおばさんはいない・・・・大丈夫かな。今更だもんなぁ・・・

結局、次の予約も取れないまま、今日は教習所を後にした。

普通免許は持っているので、普通二輪免許ならたった17時間の教習で取得出来るらしい。


楽勝じゃないの?

 

2011年8月1日(月) =二輪初跨ぎ=



入校式から約一週間。

何度も何度も電話して、やる気を見せてみたら、ようやく「空きが出ましたよ!」と連絡が入り、意気揚々と教習所へ。

「本校舎から少し離れた小屋のところで、プロテクターとかの装備を身につけて待っててくださいね。」

いやぁ、緊張するねぇ・・・こういう緊張感は久しぶりに味わう。

プロテクター着けたあたりで、少し怖く感じてきた。
なに。。?バイクってこんな大層なもの着けないとダメなの?

バイクの知識など全く無い素人って本当に怖い。まだバイクの怖さを知らないわたし。

今日の教官は入校式の日に教壇で説明をしてた、話の最後に「へへへ」と笑う癖のある年配の先生だ。なぜ最後に笑う。。。

簡単にバイクの取り扱い方やらなにやらがあって、すぐにまたがってみた。
HONDA CB400SF という名車らしいが、今のわたしには、なんのことやらサッパリで、
質問したいことすら出てこない。言われるままに触ってみるだけ。

次はいきなり先生がバイクを倒している。。。

「これ起こしてごらん」

「はぁ?」

「これ起こしてみて。コツはこうだから」と簡単そうに起こして手本を見せてくれたけど。。

うわー重い!!無理です!!!起きません!てか少しも動きません!!

「あ、そう。。まぁね、最初だからねー。そのうち体力もつくから」

1時間はあっという間に過ぎた。初めての教習ってこんなもんなのかしら。。。。
とにかくこれだけのことなのに汗びっしょり。 あぁ夏場にするんじゃなかったかもと少し後悔。

 

2011年8月4日(木) =発進・停止=



あんなに予約が取れないと言われてたにも関わらず、じゃんじゃん連絡が入ってくる。
今週はかなり忙しくなりそうなスケジュール。今日は2時間連続の技能教習だって。

若干、筋肉痛がある。
昨日、一体何したんだっけ。バイク乗るのに筋力使うの?

先日とはまた違う教官。優しそうだけど、最後にちょっと突き放される気がするのは私がドンくさいからかな。。。

いよいよ発進ですよ。
ギアをローにして、アクセルとクラッチを合わせて。。。前に。。。。前に。。。前に。。。

・・・・・早く進めよ!!!!!

いやぁ・・・・怖いのよ!(汗っ) クラッチもアクセルも合わせることは出来るんだけど。。。足を地面から離せないのよぉーーー

ジタバタと両足を出して停まっていたら、
先生に「それ、おばちゃんが自転車とか止めるやり方やん」と突っ込まれ、
「ちゃんとリアブレーキを踏み込んで停まること!」と注意される。

一時間目は「リアブレーキが踏めない」と備考欄に書かれ、補習決定。。。。

二時間目も同じ先生。

「今度は8の字コース入ってみようか」とまずは先生の後ろにタンデムして感覚を教えてもらうことに。

タンデムなら慣れてるんですよ。

「なんでまたバイクの免許なんて取ろうと思ったの・・・?」と先生に質問され、

「タンデムして街中で信号で停まったりすると、隣に若くて可愛い女の子がタンデムしてるじゃないですか、
こっちはいい歳だし、なんだか恥ずかしくて、、、それなら自分で乗った方が格好いいかなーと思いまして。」

「ほう。。。。まぁ。。がんばってね。」 ・・・あ、先生、今それ、私には取れないと思ったろ!

今度は自分で運転して8の字走行。。。
ギアをローにしてアクセル開けて  前に。。。。前に。。。。前に。。。。

・・・だから!!前に進めよ!!!!

情けない。。。怖い(泣)まっすぐの道ならなんとか進めるようになった。

でもいきなり前がカーブなのよ。
カーブで、しかも8の字ってまたすぐにカーブなのよ。丸いのよ。。道が。

となりに停めてある車に突っ込むかもしれないよ。なんでそんな近くに壁があるのよ。あーーーー怖いーっ。

「もっと積極的にいかないと。。。」と半ばあきれられた感じで本日の教習終了。

円滑な走行・ブレーキングに難ありでまた補習項目が増えた。



2011年8月5日(金)=S字・クランク バランス走行=




昨日の教習内容があまりにひどく、どうもテンションが上がってこない。

自分でもこんなに出来が悪いとは思わなかった。
たしかに運動神経は鈍いけど、車の運転は得意な方だし、何十年も前だけど、免許なんてすぐに取れたじゃないか。

そんな想いとは裏腹に教習は淡々と進んでいく。

今日は少し若い先生だけど、あまり抑揚のない静かな話し方で本当に淡々と説明される。

コースの外周はなんとなく走れているような気がしてきた。

先生に「付いてきてー」と言われ、ぐるぐる教習所の二輪コースを周ってみる。
かなり遅いスピードだけど、本人はいたってこれで満足している。

前で走る先生は、わたしのスピードに合わせながら、たまに横に並んで助言してくれる。
さすがだな、先生だもんねぇ。。。と思っていると、「じゃ、S字とクランク行くから付いてきてー」って。

え?S字って?クランクって?えーーーーーっ、あんな狭いとこ入れるわけないじゃーん!!

「わたしの頭見てー、そのまま付いてきてー、視線は頭ねー」と先生。

頭ね。。。頭。。。とは思ってるけど、あきらかにスピードが落ちてる。バ・バランスが取れない。。。

ガッシャーン!!!!ブォーン!

わっ!

やった><
クランクの出口でド派手にこけた。。。

あぁ初めての転倒だ。。。痛いというより情けない。

「バイクはね、こけるのは当たり前だからねぇ。なぜならそれは二輪だからねぇ。」

このあとまだ1時間教習の予定がある。
またテンションが落ちた。。。メンタル面で相当ダメージくらってます。バイクなんて乗れない。。。無理かもしれない。

2時間めも同じ先生がやってきた。

今更ながら気づいたのだけど、他の生徒さんも何人か同じコース内で教習を受けていて、
見ていると
マンツーマンで 先生が付きっきりなのは、どうやらわたしだけの様だ。
他の人はほとんど一人でコースを自由に走ってる感じで、先生は遠くから指示してるだけ。

もしかして。。わたし、問題児ってやつですか?

思い切って「怖いんです。」と胸の内を話してみたけど、「まぁこんなものは慣れだから」で済まされた。

慣れるのかぁ。


バイク乗れる日なんて来るのかなぁ。。

 



2011年8月6日(土) =シミュレーション・AT車体験


今日は淀川の花火大会だ 。

人ごみが苦手な仁が、「セローに乗ってタンデムして花火行こうぜー」と珍しく誘ってくれてたのだ。

もちろん、このところ落ち込みがちだったわたしも相当楽しみにしてたのだけど、
また教習所からの連絡で、「シミュレーションの学科に空きが出たので、どうですか?」ときたもんだ。

しかもシミュレーションの授業は時間が決まっていて、他の日だと仕事を休まなくてはいけなくなる。

「じゃあ、予約お願いします。。。」と教習所に向かった。

 

ちなみに、わたしは結構なゲーム好きなので
この手のシミュレーションは、まぁ得意な方だと思う。

今日は唯一、緊張せずに受けられる教習じゃないか。

「途中で気分悪くなったら、やめていいですよ」
と言われたけれど、大丈夫、大丈夫。余裕よー。

画面の中では公道で走行すると、よくあるシュチュエーションが繰り返されている。

あっという間に1時間終わった。
二輪車での走行は、いろんなリスクがあるんだなーと改めて思う。
普段乗ってる車よりももっと気を遣う場所も多い気がする。

このあとセット教習でAT車に乗るらしい。
ビックスクーターですかね。 乗れるでしょーそんなの簡単に。

 

昨日の淡々先生だ。

わたしの為に?何故か125ccのAT車が置かれてある。「さすが先生!」というべきか。

本当は400ccのバイクに乗る筈なのだけど、きっとわたしが乗れないと踏んだんだろう。

案の定、ハンドル握った瞬間に「重っ」と言ったわたしに、
「まぁ今日の教習はこういうAT車もあるってことの体験だから、乗れなくてもいいよ。どっち(125か400ccか)乗る?」
「こっち」と迷わず125ccを選ぶ。
そして400ccのバイクを小屋に片付ける先生・・・心なしか哀愁の背中・・すみません。

「まぁ自由に乗ってて」と今日は放置状態。

このスクーターってやつ、結構怖いのね。ニーグリップとかしなかったらバランスどうするの?

おっと。。曲がれないよー。

あ!ちょっと!ねぇ!先生〜〜〜このバイク、どうやって停まるんですかぁ〜!!!

と、質問して二度見される。
「原付乗ったことないの?」「自転車は?」

無いけど何か?

足元にブレーキがあるもんだと信じて、探してみたけど見つからず。

「両手ブレーキだから。。。」と言われ、「あーそうでしたそうでした。」アハハハハハ・・・・ハハ

 

2011年8月7日(日) =休日の特訓=



東大阪市某空き地にて、低速・8の字走行を練習することに。

仁の愛車”YAMAHAセロー”を借りて、発進・停止から丁寧に練習。今日の先生は仁。
高校生の頃、阪奈道路をCBR250Fでブイブイ走ってたリターンおやじだ。

教習所で乗っているCB400SFとは全然重さが違う。さすがオフロードというか、すごく軽い!扱いやすい。
非力なわたしでも軽々と引き回しが出来る。 これなら怖がらずに乗れる。

ちょっとだけバイクが楽しく思えてきた。ありがとうセロー先輩!※俺じゃないのか・・by 仁。

ただこの日は真夏の炎天下。

連日の教習所通いの疲労も重なってか、8の字走行をしているあたりでクラクラ目が回ってきた。

そりゃそうだろう8の字なんだから。。。。って違うぞ。。熱中症だ。バテてダウン。。。


2011年8月10日(水) =坂道発進=




日曜に特訓したおかげで教習所へ通う足取りも軽くなってきた。
なんとなく上手く乗れそうな気がしてくる。

それに今日は仁が見学に来ている。どうやら常日頃、心配してくれているらしい。

やたら声の小さい先生がやってきた。ヘルメット被ったらますます聞こえないじゃないか。。

「ボソボソ。。。あの。。好きなように走っててください。」
あぁ、今日は放置プレイか。その方が都合がいい。あまり構えないで自由に走ってみよう。

”一本橋” ”スラローム” ”クランク” ”S字カーブ” 中でも苦手なのは、やっぱり”一本橋”と”クランク”

指示もないので、ここはゆっくりとマイペースで一つ一つ苦手な課題を練習してみる。

無意識に自分を甘やかすから、無理しないのもあってコケることはないけど、どうしても上手く走れない・・

小声先生が近づいてきた。

「坂道発進やってみましょうか。あ、無理はしないで下さいね。」
この先生、他の先生からわたしの噂でも聞いているのか、やたら無理をさせないようにしている。
怪我されたら困るんだろーな。

ところが、小声先生の思惑とは違い、坂道発進は難なくこなせた。

もともとクラッチのつなぎ方は出来ている方なのだ。慎重に落ち着いてアクセル開ければ問題ない。
どうだ!やれば出来るのさ。へへん。

どや顔作る手前で、「すみません、バランス走行は補習つけときますね。すみません・・」と申し訳なさそうにハンコを押す先生。

いや、そこはそんな謝らなくていいっすよ。。。わたしが鈍いだけなんですから。。

 

2時間目はさっきの小声先生に変わって、今度は大きな声の熱血先生だ。

何度も繰り返して分かりやすく説明してくれるので、今まで疑問だったことも一気に解決しそうな感じ。

「あれ?バランス走行難しい?怖いのかな?じゃぁ、この時間は8の字走行やってみましょうか」


8の字走行は今までも何度もやってきた。一度も上手く走れたことがない。

広い場所に移動して、いつもの8の字コースよりもちょっと大きな円を描いて、アクセルワークのコツとリズムを教えてもらう。

あ、ちょっとコツを掴めた気がする。

「そうそう、そんな感じで、じゃこっちの8の字コース入ってみて」


いつもの8の字コース場だ。

お?なんだか走れているっぽい。先生がいい位置で先導してくれる。

近くで見学していた仁とふと目が合った。一瞬、気がそれたと同時にバイクの軌道が歪んできた。

「あ、よそ見しないでねー。よそ見したらバイクはその方向に行きますから。視線の向きに流れますよー」

二輪走行は目線が大事。そのことを身を持って知る。


2時間、蚊にさされながら見ていてくれた仁が「思ったよりうまく乗れてたよ。心配ないな。」と褒めてくれた。
自分では内心、まだ怖々バイクに向き合っているのだけど、はたから見れば、フツーに乗れているらしい。

充実した時間だった。

本当ならそろそろ一段階のみきわめなんだけど、補習がかなりついているので、まだ頑張らねば。

あぁ、「安心パック」にしといてよかった。入学するときに「どうしますか?」と聞かれ、
免許なんてすぐ取れるだろうと甘く見て断るとこだった。
でも、一応念のために+1万円で補習代の加算がないオプションをつけておいたのだ。


早くも元取れてるじゃないかーーーー


2011年8月11日(木) =バランス走行=


さすがに連日、仕事帰りの2時間実技は体力的にもきつくなってきた。ほんともう若くないわ。
しかも今の時期は夏真っ只中で、夕方といえど気温が高く、思った以上に体力を奪っている。

でも、早く免許取りたいし頑張ろう!

っていうか、最初は予約取りにくいシステムだからって言ってたじゃないの。こんなハードに取れなくていいよー。

みきわめまではまだ当分補習が続く。


今日もはじめて見る先生だ。いちいち言葉の最後に「OK?」をつけ、見た目は団塊世代。

「じゃー外周走ってみて〜OK?」

外周は気持ちいい。といっても速度は30kmほどしか出てない。

そのことに気づいたのか、OK先生「よーし、もっとスピード出して行こう〜〜OK?」。。。 OKじゃないよ。

「もっとー!!もっとーーーーー!OK?」
声につられてアクセルを。。。開けたつもり。それでも、まだ40kmも出てない。


教習所のバイクって40km速度出したら、前後に付いているランプが正直に点灯するらしい。
わたしのはなかなか点灯しない。これさ、壊れてるんじゃないの? と思うけど、アクセル開けてないだけ。

「まぁ今日はそこまでにしとこう。いいでしょう。OK〜」

次は問題のバランス走行。もっとも苦手な”一本橋”集中トレーニング。

はぁ。。。腕にものすごく力が入る。「OK」「OK」言われながら、何回かに一度は走りきることが出来た。

ちなみに バランス走行は腕に力を加えれば加えるほど中心がブレてバランスを崩してしまう。
どこかのサイトで”一本橋” は童謡「鳩ポッポ」を歌いながら渡れば、ちょうど7秒で渡れるよと書いてあったから、
試してみようと思ったけど、そんな余裕すらなかった。


もうクタクタです。先生。。。



続いて本日の2時間目。

また初めての先生だ。結構いろんな先生がいたんだなー。なんとなく穏やかな普通のおじさん。

まぁ、ここまで補習が続いていると課題がなんだったのか、よくわからなくなってくる。
言ってもどれも苦手なので、とりあえず一通り走ってみる。
先生は自転車でのんびり着いてくる。

さっきのOK先生のスピード教習が効いたのか、わたしとバイクとの間に少し一体感が生まれた気がしている。
いい感じじゃないの?クランクとか、ほらスイスイ〜〜〜〜と???あれ?

ガッシャーーーーーン!!!

あっ!

あ、まただ。クランクの出口でド派手に転倒した。
「痛っ!」
足が抜けない・・・え?何これ、バイクと縁石に足が挟まってる??わたしの足の甲にバイク乗っかってますけど。。。

「せんせーーーーーーーー。」
慌てて先生が寄ってくる。「どうした?挟んだの?」
倒れたバイクを起こしてくれて、足はなんとか救出出来た。痛いけどなんとか我慢できる。

「足の甲かぁ。。。骨は大丈夫そうな感じだけど、痛むよ。長引くかも。今日はこれで終ろう。事務所まで歩ける?」

と、まだそこまで痛くない。歩けます。

「疲れてたんだねぇ。。。無理させたかな。」と先生も肩を落としてる。いや先生のせいじゃありません。。
周りを見ると割れたミラーの破片。。。ごめんねCB400SFちゃん。。一体感生まれてなかったんだね。。。。

事務所に行くと、軽く手当をしてくれて「救急車呼ぶ?」と言われたけど、 左足だし、まだ運転できそうなので車で帰りますと断り、
足の痛みよりも、心の痛みの方がダメージくらっていた。

 

それでも この時はまだ、

次の日から、しばらくバイクに乗れない日々が続くなんて思いもしなかった。

 

 

第一段階 基本操作および基本走行 第二部 へ続く

TOPに戻る